本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

無差別な通り魔殺人事件の犯人を捕らえた話

これは、池袋連続通り魔殺人犯犯人追走劇に加わった、ある男性のルボである。

事件の被告人は、小中学校時代を何不自由なく過ごし、進学校である県立学校に入学した後も、将来は大学を卒業して事務系等の職業に就きたいと希望していたが、家計が苦しくなって高校中退を余儀なくされ、さらに大学進学も質心せざるを得ない境遇となつた。

各勤務先の独身寮に住み込みながら、ビル清掃員などとして働いたが肉体労働に従事させられているという意識が強く、いずれの職場でも上司や同僚との人間的父流を深めることができず、待遇の向上も望めないと感じ、短期間で転職を繰り返していた。

きつい仕事に従事しながら自分の努力が報われないことに対する不満を募らせ、今後も不本意ながら厳しい肉体労働を続けていかざるを得ないのであろう自分の将来に絶望の気持ちをもっていった(弁護側冒頭陳述書)

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不動産管理とパチンコ店経営を柱とする大阪の会社に就職して13年。32才でオレはパチンコ部門の社長にまで出世した。優秀だったつもりは毛頭ない。なんとかそこまでやってこれたのも、社風が肌に合っていたおかげだろう。

「ごちゃごちゃ考えるのは動いてからにせえ」

社の方針は、まず行動ありき。特に不動産管理部門は、家賃を払わない住人に締め出しを食らわせた。あるいは部屋の中に住人がいるのに外から強引にロックしたりと、対外的にも有無を言わせぬイケイケぶりを発揮した。相手が誰であろうと構わず突っ走るその社風はヤクザですら一目置き、警察には「お前ら企業舎弟とちゃうんか」とあらぬ疑いを持たれたほどだ。ときに社内でつかみ合いの喧嘩まで始まる体育気質、中にはそのノリに付いていけず退社するヤツもいたが、ヤンチャ坊主のまま大人になったオレにはとても居心地が良かった。頑張れば頑張るほど評価される我ながら充実した13年間だったと言えるだろう。

どこへでも駆けつけ、そのノウハウを持ち帰る。大阪でトップクラスの店になっでからも、その姿勢は変わらなかった。平成11年9月初頭そのときもまたオレは一次の出張の打ち合わせをしていた。東京出張の予定は、9月7日からの2日聞に決定した。新宿、渋谷池袋、上野など主なパチンコ街の有名店を回る計画だ。

同僚と思われる人物から無言電話が掛かってきた。好感を持てない同僚からいたずら電話を受けたことで感情が高ぶり、これを引き金として、自己を正当に評価しない社会に対する不満や世間の人々に対する反感をあれこれ考えるうちに一睡もできなくなり、一気に爆発させたい衝動に突き動かされ、この上はだれでもよいから人を殺して世間を驚かせてやろうと決意した。

そこで、被告は、四日午前一時ころ、自室にあったレポート用・紙に

「わし、ボケナスのアホ全部殺すけえのー」などと書きつけこうして被告人は、右エスカレーター方向から被告人の方に歩いてくる女性(六六)を認めて同女に近づき、殺意をもって、右手に握った包丁で、同女の左側胸部を一回突き刺し、同所において、同女を失血死させて殺害した。(中略)次に、被告人は、池袋駅方面に向けて逃げる男性を殺害しようと決意し、男性の後を追い掛けたところ、同人とすれ違うようにして被告人の方に歩いてきた女性(二九)を認め、右隣を歩いていた自己の夫のほうを振り向いた同女の背後から、殺意をもって、包丁で、同女の左腰部を一回突き刺し、(弁護側冒頭陳述書)

10分後の11時40分ごろ、入り口付近にメンバーがぞろぞろと集まり出し、じゃあ次は西口のパチスロ専門店に行くかと、従業員の丁重なお辞儀に見送られながら店外に出ようとしたときのことだった。1人の若い女性が前かがみになりながらョロョロと店内に入ってきた。その背中を男性が手で押さえている。

「どうしたんすか」「大丈夫ですか」具合でも悪いのかと思い声をかけると、隣の男性が放心したように言う。

背中、刺されたー刺されたってどういうことやねん、刺されたって。見ると、女性の背中にあてられた男性の手が真っ赤に染まっている。血だ。いったい、どないなっとん?真っ先に走りだしたのは先輩の松井(仮名)だった。群衆が見つめる方向へ一目散に駆けて行く。

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「ちょっと、救急車呼んでー」オレは入り口カウンターの姉ちゃんに怒鳴りつけて、松井の後を追った。(どういうことや、これは。刺されたって、通り魔か?)
被告人は、そのまま池袋駅に向かって」ハ〇階通り左側路上を走り、左手に玄能を握り、右手に包丁を握って、歩行中の通行人に次々と襲い掛かり、池袋駅方面に向かい歩行中の高校生三名に対し、包丁で背中を順次切り付け、傷害を負わせた。(弁護側冒頭陳述書)

刺したヤツの姿はない。前方では、人混みをかきわけながら松井がひた走っている。「どこ行った?」「どこや、どこや?」オレは、立ち止まって放心する人たちに犯人の行き先を聞き、彼らの指さす方向に向かって走った。(アンタら、何やってんの。人刺されたんやで?追いかけなあかんやろ)
続いて、被告人は、東池袋七号先歩道において、池袋駅方面に向かい歩行中の男性(四五)に対し、前記包丁で同人の背中を切り付け、背部切創の傷害を負わせ、一〇号先歩道において、池袋駅方面に向かい歩行中の女性(五二)に対し、前記包丁で、同人の背中を切り付け、背部切創等の傷害を負わせ、六号先歩道において、池袋駅方面に向かい歩行中の女性(四六)及び男性(一一八)に対し、前記包丁で、順次同人らの背中を切り付け(弁護側冒頭陳述書)

数人が通りに倒れているのが見えた。「私も切られたー」と叫ぶ女性。歩行者たちはア然とした様子で、駅の方向を見つめている。(ピストル持っとったらヤバイな、どないしよ)少しそんなことも頭をよぎったが、足が止まらなかった。怖いとかなんとかじゃなく、松井が危ないという意識がまずあった。ウチの会社の中でも行動派の部類に入るあの人の性格からして、無茶なことをしかねない。ヤバイで、これは。ワケのわからん相手に素手で向かっては、こっちがやられる。なんか武器になるものはないかと、オレは道を物色しながら小走りに駆けた。

と、ゲーム喫茶だかピンサロだかの看板を持ったオッサンが目に止まった。「ちょっと、これ貸してや」オッサンから奪い取った看板は、見た目よりも軽くフニャフニャで、使い物になりそうもない。すぐ脇に捨てた。

「どっちや?どっち行きよった?」「そ、そっちー」

オッサンが指さした方向に、酔っぱらいのようにフラフラと歩いている1人の男が見えた。何か手に刃物のようなもの持っている。その後ろから松井がイノシシのように突っ込む。(松井さん、ヤバイでー)男の背後から猛烈な勢いでタックルをかました松井が、そのまま路上に引きずり倒した。もう後には引けん。わずかに遅れてオレも加担する。

「オリャ、何さらしとんじゃ、このボケー」

2人してボコボコに男の顔を殴りまくっていると、後に続いてもう1人の先輩の大西(仮名)、そして会長がやってきて、そこからは4人でしばき倒した。
「アホか手錠かけるんは・こいつやろー・」
多勢に無勢。しかも男は力も覇気もなく、目は泳ぎ、ただされるがままに突っ伏しているだけ。しかしこの期に及んでもオレは、こいつが逆襲に転じてくることを恐れた。なんといっても人を刺すようなヤッだ、何をやらかすかわかったもんじゃない。右手に刃物を握りしめていることが気になったオレは、はいていた革靴のかかとで、男の手をアスファルトに擦りつけるように踏みにじった。刃物に「730円」の東急ハンズのシールが貼ってある。手から血がにじむまで踏みつけると、男はようやく刃物を離し、すぐにそれを奪った松井が大きく振りかざして頭に殴りつけようとした。(そりゃマズイで、松井さんー)誰かが制したのか、自分で思いとどまったのか、松井の手は振り下ろされることなく済んだ。しかしこの男、あの女性の背中をさしたのだ。ノミではなく、
他にナイフのようなものを持っているはず。

「おら、おまえ、ナイフどこやったんじゃー」「ーステタ」

「ああん?捨てたやと。ホンマか、出さんかいーおらー」

ボコボコにするとは、こういうことを言うのだろう。男の顔は腫れ上がり、口や手からは出血もしている。おら、もっとやったるぞ、このクソタレーしかし、周囲を取り囲んでいる連中は事情をつかめていないようだった。加勢するどころか、逆にオレたちをなじり出したのだ。

「君たち、やめなさい」1人のオヤジが、オレの手をつかんで、ふりほどこうとしてきた。リンチか何かと勲遅いしているらしい。

「おっさんー・こいつ人刺しとるんやで」おっさんをビルの壁に突き飛ばし、続いて制止に入ってきたオバハンもなぎ倒し、オレは男をどつき続けた。「やめなさいー一」
1人の警察官がやってきて、手錠を取り出した。ようやく収まるかと思えば、そいつ、オレに手錠をかけようとする。

「なんでやねん、こいつやろ、こいつが刺したんやー」「え?」

「アホか、手錠かけるんはこいつやろ」

すったもんだの末、まもなく現れた数人の警察官が男を取り押さえ、事態はようやく収拾した。
あの彼女が亡くなった…
「ちょっとやりすぎたかもな。」

警察が駆けつけると共に、周りの人混みに紛れたオレたちは、目配せし合った。地元大阪では警察に何かと目をつけられているオレたちのこと、この一件も巡り巡って、過剰防衛だなんだと難クセをつけられる可能性がある。

「とりあえず、次行こか」「そうしましょ、そうしましょ」

まだ視察すべき店は残っている。喧嘩で殴ったわけではなく、悪人を懲らしめただけなのだから、わざわざ調書を取られる必要もないだろう、メンバーはそう判断を下した。しかし、コトはそう簡単に終わりそうもなかった。やみくもに走ってきたサンシャイン通りをゆっくり歩きながら引き返していると、人混みからこんな声が聞こえてきたのだ。

「おばあちゃん死んだみたい」ア然とした。

死んだやと?殺人事件なんかいな?おばあちゃんが刺されたという東急ハンズ前、そしてあの女性が倒れ込んだパチンコは、警察、救急隊、人ゴミで騒然としていた。遠目に、担架で人が運ばれる様子が見える。

「亡くならはったって、大事件やで、これ」「ホンマやなあ」

「人殺しやったら、もっとどついたったら良かったなあ」

「ホンマやで。でも、これちゃんと説明しといたほうがええんちゃうか」

車の中で話し合ったオレたちは事件の重大性を直視できず、視察を中断して、池袋警察署へ事情を説明に出向くことにした。しかし、事情聴取に忙しいのか、警察はサラサラッと調書を取るだけでロクに相手にしてこない。

「なんや、それやったらまた視察行くか」「そやな」

こうして池袋を後にしたメンバーは、次なる目的地、上野へと向かう途中、池袋で通り魔事件発生とひっきりなしに報じていたカーラジオから、29才の女性が病院で亡くなったとのニュースが聞こえてきた。

「あの人ちゃうの?」

「え、嘘やろ」

それまではなんだかんだいっても他人の命としか思っていなかったオレたちだが、その報を聞き、心底動転した。あのとき目の前で見た、ョロョロしつつもまだ元気そうだった彼女が亡くなった…。何とも言えぬやるせなさがこみ上げてきた。

ホンマかいや・・その後も視察には回ったものの、頭の中は、よろけながらパチンコ店内に入ってきた女性の姿が焼き付いて離れない。しかしオレたちにできることは、花を買って、青いシートの張られた現場で手を合わせるぐらいしかなかった。
傍観者を決め込むのはアカンやろ
2日後の9月10日、大阪市内のホテルで記者会見が開かれ、その場でオレたちは、犯人を取り押さえるまでのいきさつを説明した。
売名のためではない。そうせざるを得ない経緯があったのだ。事件当日の夜、会長の知り合いの関係で、視察メンバーはあるプロレスラーと一緒に食重事一する約束をしていた。悲しい事件があったとはいえ、約束は約束、有名人に会えるうれしさもあり、全員で都内のステーキハウスへ。その席上で、オレたちは昼間の出来事をこと細かに話した。

「……そんなことがあったんですわ。物騒ですなあ、東京は」

「え、君らかー関西弁でむちゃくちゃ殴って、パッと立ち去った連中っていうのは。噂になってるぞー」

レスラーの横に座っていた日本テレビの関係者が素っ頓狂な声を上げた。

「ええ、そうですわ」「ちょっとワイドショー番組のスタッフ呼んでもいいか」

「まあ、いいですけど」

すぐさまワイドショーのスタッフが店内に現れ、インタビューが始まった。

「ホンマ東京の人はみんな無関心ですわ。あんなん大阪やったら10メートルで捕まえてまっせ」

正直な感想だった。大阪人から見ると、東京人はどこか冷ややかだ。たとえば芸能人に遭遇しても遠巻きに眺めているだけ。それが洗練というものなのかもしれないが、一事が万事その調子ではアカンやろ。

今回かて、追いかけたんオレらだけやん。その模様は翌朝放映され、大阪に帰ったオレたちは、会社の周りで多数の報道人に囲まれた。

「すんません、仕事があるんで、明日まとめて説明しますわ」

翌日の会見で、どことなく英雄視されている雰囲気に舞い上がる気分もなくはなかったが、命を落とされた方がいらっしゃることを思えば、心中は複雑なものにならざるを得なかった。

★ここ数年、若者による無差別な殺人事件が頻発し、メディアを賑わせている。このとんでもない状況にいったい何をすればいいのか、「まず動け」のオレにはさっぱりわからないが、傍観者を決め込むのだけはアカンのとちゃうか、というのが個人的な考えだ。理不尽はいつ誰の元に訪れるかわかったもんじゃないのだから。最後になったが、本事件で亡くなられた被害者の方、遺族の方に、心より御冥福を申し上げたい。