本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

パトカーを奪い銀行からお金をだまし取ろうとした偽警察官

警察を編そうとする人間が3度も派出所に来るか?
九七年二月一〇日午後一時三〇分ごろ、作業着姿の一人の男性が滋賀県警彦根署管内豊郷駐在所に現れた。

「パトカーの無料点検に来たんですが…」

「無料点検?」

対応したのは駐在所勤務の巡査部長・富田弘(仮名、四四才)だ。通常、パトカーの定期点検はひと月に一度の割合で署内の車両整備責任者が業者と打ち合わせ、点検に出すことになっている。富田には男の話に心当たりがなかった。

「いや、自分は引き取りに来ただけなんですが…」
「そうでっか」

巡査部長は改めて相手をうかがった。歳の頃なら還暦過ぎか。紺色の作業着を身につけたその姿に、別段、おかしなところはない。

「オタク、どこの業者?」

「××自動車エ場ですが」

男はすんなり、指定業者の名を口にした。確かに××自動車は毎回、署の軍両を修理、点検に出しているところだ。が、どこか引っかかる。いつもは署員が直接、エ場に持ち込み、修理が済むと業者が車両整備責任者へ車を引き渡すのが常。

業者が自らパトカーを引き取りに来ることなど、いままでなかったはずだ。

「とにかくそんな話は聞いていない。聞いてない以上、パトカーを渡すことはできない。」

「もっともですよね。それあ、会社の方から後で、連絡してもらいますわ」

男が殊勝な態度で立ち去った三〇分後、一本の電話が入る。

「先ほど係の者に取に行かせたのですが」

「あー、整備点検があるんですよね。ちょっと署の方に確認してみますんで」

「富田は電話を切ると、署の車両整備責任者にかけ事情を話してみた。おかしいな。そんな話、聞いてないよ。確かに××自動車エ場と言ったんだな。折り返しこちらから確認してみるから」

「わかりました」

渡さなくて良かった。警察はとにかく「確認」が鉄則だ。仮に無料点検の話が本当でも、本署の車両整備責任者から業者に問い合わせてもらえれば間違いはない。と、そこへ今度は地域課の幹部から電話が入る。

「豊郷で事故が起きたので至急現場に行ってほしい」

緊急事態発生である。富田は急いで出かける準備を始めた。仕事着の男が再びやってきたのはちょうどそのときだ。

「××自動車に頼まれて来たんですが…」

「ちょっと待って。今はアカンのや。事故の報告があって、現場に行かなければならないんだ。終わってからにしてくれ」

「わかりました。では、後ほど参ります」

またも男は引き下がった。気の毒なことをしたかもしれない。富田は少し申し訳ない気分になりつつも、現場へと急行した。事故処理を終えた彼が駐在所に戻ったのは午後三時すぎ。ヤレヤレと一息ついていたところに、三度、例の男が姿を現した。

「パトカーを引き取りに来たんですが…」

深々と頭を下げる男を見て、富田は考えた。

警察を騙そうってヤツが、ノコノコ三回も駐在所に来るか?ただでさえ忙しい師走に、自分のせいで業者に迷惑をかけているのかもしれない。一応、本署には連絡を入れたことだし、持ってってもらうか。こうして富田巡査部長はパトカーのキーを渡す。男は「一時間ほどで終わる」

と言い残し、パトカーに乗って姿を消した。

警察手帳を見せないいかにも不審な警察官

それからほどない午後三時五〇分ごろ滋賀県湖東町(愛知川署管内)にある「びわこ銀行湖東支店」のインターフォンが鳴った。

「どちら様で」「警察の者ですが、ちょっと出てきてもらえますか」「はい?」

対応したのは同支店の次長だ。すでに窓口は閉まっており、外を覗くと作業着姿に白いマスクをつけた男が、通用口付近でウロウロしていた。おかしいと思いながらも、近くに停まったミニパトを確認した次長は、自称・警察官の指示に従いトビラを開ける。「お宅の支店からニセ札が一枚出たと警察に通報があったんですよ。残りのお金を全部持ってきてくれないか」

「はあ…。あの、念のため警察手帳を見せてもらえませんか」

「……それは、見せられないな」

通常、銀行に訪れる警察官は行員が口を出さずとも真っ先に警察手帳を見せ、堂々と行内に入ってくる。なのにこの男は手帳を提示しようともしない。不審に思った次長はここで「ちょっと確認してみます」と店内に戻り、すぐさま愛知川署刑事課に連絡を取った。

「ニセ札の捜査だという方が、みえてますけど本当ですか」

「そんな話は聞いてないな」

「でも、パトカーに乗っていらっしゃいますが」

「何」

次長が外を見ると、すでに男はパトカーごと消え失せていた。これを受け愛知川署は県警本部に連絡、県警は県内全域に緊急配備を敷くとともに各署のパトカーに張り込むよう指示を出した。

そこへ今度は、彦根署刑事課に二本目の連絡が入る。滋賀県多賀町にある「滋賀銀行多賀支店」の次長から「ニセ札捜査を名乗る男がパトカーに乗ってやってきた」というのだ。

事情を聞くと、午後四時二五分ごろ、作業着に白いマスク姿の男がキャッシュコーナーに現れ、インターフォンで「外に出てきて、車のところまで来てください」と要求。

指示に従うとパトカーを見せ

「お宅の支店からニセ札が見つかったので、確認のため銀行にある現金を全部車に載せ、一緒に来て欲しい」

と言われたらしい。

「ただ、その警察官は署名も名前も名乗らないのでおかしいと思い『相談してきます』と中に戻ったら、パトカーごといなくなってしまったんです」
両行の話の内容はほほ同じ。パトカーに乗り、警察官を装った銀行強盗が犯行を重ねているのはもはや明らかだ。県警本部は至急、全車の所在を確認する。と、ほどなく豊郷駐在所のミニパトを「修理のため業者に引き渡した」ことが判明した。

「なぜ、確認しないんだ」「申し訳ありません」

彦根署の車両整備者が慌てて業者に連絡すると「パトカーを受け取った覚えはない」との返事。この時点で、本物のパトカーが一般人の手に渡ってしまったことがわかったのである。